毒乙女~大正整形奇譚~を最新刊まで読んでみた感想です。

毒乙女~大正整形奇譚~あらすじ

時は日本に産業と新しい技術が広がりを見せ始めていた大正時代。

とある地方の製糸工場で、日々真面目に働く山野千代は、決して恵まれた人生をおくれてはいませんでした。

彼女は生まれつき顔を歪ませており、それは化け物のような顔と揶揄され、周囲の人々から蔑まされていました。

いわれの無き虐げに耐え、奇異なる眼差しを向けられ、日々生き地獄のような人生を過ごしていた千代。

しかし彼女はそれでもと、自分を受け入れてもらおうと懸命に日々を生きていました。

そんな中、突如として不幸が襲い掛かってきます。

些細な諍いに巻き込まれてしまい、工場を燃やした犯人として扱われ、指名手配され、一人、東京へと逃げ延びた千代。

しかし華の都の地でも彼女は受け入れてもらえず、容姿のせいで疎まれ、警察にも追われ、あてもなくに東京で彷徨う彼女は、不注意で車に轢かれてしまい、意識を失ってしまいます。

――そして目が覚めると、千代は見た事の無い美しい顔を手に入れていたのです。

ある目的の為にと、自分の顔を整形した医師・松本雄一郎に誘われる形で、美しい華族の令嬢として生きる事になった千代。

抗えない時代の荒波に翻弄され、容姿で左右されてしまう世界で偽り生きていく千代は、新しい人生を生き抜いていけるのでしょうか?

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毒乙女~大正整形奇譚~見どころ

本作は顔が醜いが故に虐げられてしまったヒロインの千代が、いわれも無き犯罪の首謀者にされてしまい、彷徨う様に東京へと逃げ延び、運命の悪戯か美しい顔を手に入れ、人生をやり直していく物語として紡がれています。

事故に遭ってしまい、幸か不幸かと千代は美しい顔を手に入れてしまい、綺麗な顔立ちの令嬢として生まれ変わったと、こう書けば、ある種の童話みたくにめでたしとなるかもしれませんが、現実は非常に厳しいモノで、ここからさらなる運命に巻き込まれていきます。

この作品の見どころは、綺麗になれたらと、簡単に幸せになれる事は無いと、そして綺麗だからこそに、見舞われてしまう不幸もあると、簡単に幸せを手にする事が出来ない苦難が見どころとなります。

大正時代の東京と、文明開化の最盛期とも言える時代で、令嬢としての地位を得た千代ですが、楽しい新生活が簡単に送れるわけでもなく、彼女はさらなる苦難に見舞われていく事となります。

タイトルに記された毒乙女と評されている通り、彼女は容易に第二の人生を送れずに生きていく事となります。

令嬢となるも、それは幸せな事ではなく、今まで望んでも手に入れる事の出来なかった美しい容姿が手に入ったとしても、千代は幸せな日々を送る事は出来ず、その美しい顔が故に、彼女は苦しめられてしまう事となります。

嫉妬に妬みと、美しいゆえにやっかみを買ってしまい、また彼女の容姿に執拗な想いを抱く輩などと、彼女はさらなる不幸な日々を送る事となり、女学校に通うようにもなれば、さらなる悪意を受ける事となります。

決して、美しくなったからと言って、幸せな日々は送れないのだと、痛感させられてしまう凄惨たる現実。

千代を助けた外人医師のエドワードも、善意で千代を助けたのではなく、女性を使い、利益を得ようとする悪漢でしかありません。

悪意ある者達が幾人も現れ、その度に傷つけられてしまう千代。

しかし彼女は、そんな事をされて泣き寝入りするのではなく、相手に抗い、自分の人生を得ようと奮闘し、自分の求めている幸せを手にしようと生きる強さが、本作の見どころとも言えます。

美しいからこそに不幸に見舞われ、醜いからこそに不幸に見舞われてしまうと、望まぬ形での不幸の渦中に放り込まれてしまう千代。

しかしそれでもと、ただ相手のはけ口として利用されるのではなく、自分の意志で抗い、立ち向かう様は、容姿などに囚われない強さを持つ、ヒロインの見どころとも言えます。

容姿に囚われる事なくに、己の意志で生きていこうとするヒロインの物語が、本作の最大の見どころとなります。

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毒乙女~大正整形奇譚~感想

化け物と呼ばれ、周囲から意味もなく嫌われ続けた少女の歪んだシンデレラストーリーとなる「毒乙女~大正整形奇譚~」

美醜によって虐げられ続けた彼女が成り上がる作品と最初は思いましたが、今後の展開でどのように変わっていくのかと、その内容に注目な作品となっています。

千代は顔が醜いと蔑まされ、周囲からいわれなきイジメを受けていたと、壮絶な人生を歩んでいました。

顔が醜いと言うだけの理由で理不尽な扱いを受けるも、いつか顔ではなく、自分を評価してもらおうと直向きに努力をするも、それを些細な悪意によって潰されてしまうと、彼女は幸福を歩める人生を得てはいませんでした。

それは例え都会に行ったとしても、世間の応対や対応は酷いモノであり、何も変わらなかったことで千代の心の傷はさらに広がり、深い悲しみを抱き、そんな絶望の中で車に轢かれてしまい、そこで人生が終えたかと思いきや、思わぬ転機が訪れ、容姿が変わってしまいます。

美しく、見目麗しい令嬢の容姿へと変わったことで、千代の運命は大きく変わるのですが、それは安易なものではないと、彼女の本当の苦難はここから始まっていくのだと、ただひたすらに彼女には安寧が訪れません。

顔が醜いと言うだけで、酷い扱いを受けてきた千代。

心は美しいと思われるも、それは誰にも認められるものではなく、外見で左右されてしまうのだと、千代は多くの差別と偏見の中でそれを悟り、美しい容姿を使い、成り上がっていくのかと、今後の彼女の行動に注目がいきます。

東京で令嬢として新しいい人生をやり直すと、サクセスストーリーの様な展開ではあるも、それは多くの人を騙し、欺き、そして踏みつけて成り上がるといった展開も予想されていきます。

事故に遭ったが故に千代は顔を綺麗にしてもらうも、それは悪意ある行動の産物であり、その産物をどう生かすのかと、彼女の今後に物語の焦点が重ねられていくのでしょう。

確かにこれだけ美しく、そして綺麗になれたらば令嬢として幸せに暮らせるかもしれませんが、美しいが故に残酷な運命も待ち構えてもいます。

虐げられ差別されてきた千代が、美しい容姿を手に入れ、今後どのような行動をとり、そしてどう生きるのかと、二つの選択肢が用意されています。

毒乙女と呼ばれる悪女となるのか、それとも毒となりて正道を正すのかと、彼女の生き様と言うべき物語が、どのように紡がれていくのか?

そんな先読みの出来ない千代の美しき人生が華やかなものであるのか、それとも悪女として葬られてしまう醜悪なものとなるのかと、注目な作品です。

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