親友の湊音の死に、ずっと罪悪感を抱えている凪沙。
湊音を好きだった海斗に贖罪したくて、手酷く抱いて欲しいとお願いする。

希うオリゾンテあらすじ(ネタバレ注意)

主人公の千石渚沙(せんごくなぎさ)は、生まれ育った島から逃げるようにして都会に出る。

しかし、特に理由もなく仕事ばかりに打ち込んでいた渚沙は過労で倒れてしまう。

そんな彼の元に、心配して駆けつける母親。

すっかり憔悴した母親の姿に、胸を痛め、凪沙は島へ帰ることとする。

空き家で一人暮らしを始める渚沙。

そんな彼のもとを訪れる布施海人(ふせかいと)は、高校時代の友人だった男である。

昔から仲の良かった渚沙と海人。

そして高校時代に引っ越してきた幡ヶ谷湊音(はたがやみなと)は、よく3人で過ごしていたが、ある日湊音が死んで、全部壊れてしまった。

何でもできる海人にコンプレックスを持っていた渚沙。

海人が湊音に惹かれていることがわかって。

彼に負けたくない、そう思った渚沙は自分も少しずつ惹かれていた湊音に告白してしまう。

湊音が死んだのは、そう伝えて逃げた後のことである。

いつも彼が悩んだら向かう池の側に、彼の靴が浮いていたのだ。

海人に再会した渚沙。

葬式で別れて以来の再会だった。

あの日の罪を抱えきれず、彼に体を差し出す。

告白なんてしなければ。ずっと苦しくて、抱えきれないでいた。

彼に、なりたかったを読んだ感想

渚沙の当時の出来事や気持ちが少しずつ明かされていくお話です。

どの場面の描写も綺麗で、そして、渚沙だけでなく海人の心情も描かれているので、見ていて2倍楽しめます。

湊音が死んだことを責めてほしいから抱いてほしい。

最初、渚沙がそう海人に願った時はよく理解できませんでしたが、少しずつ明かされるうちに、あぁ贖罪の意味でなんだと理解して、もう一度そのシーンを読みに行きました。

渚沙と海人が抱き合っているシーン。

互いの心を通わすまでは、キスもありません。

渚沙にとっては、もっと酷くしてほしいと思っている状態です。

しかし、湊音が亡くなった時、渚沙に酷い言葉をかけたことを、海斗はずっと後悔しています。

バラバラになってしまい、1人残された海斗も苦しんでいる状態で、凄く切ない展開です。

濁流に渚沙が飲み込まれた時は、本当にハラハラしました。

その後、ちゃんと結ばれて、気持ちを通い合わせられて良かった。

すごく心があったかくなりました。

この作家さん、すごく心情描写や設定の作り込みが上手くて、他作品でもすごくドキドキさせられます。

ハッピーエンドもそうなのですが、そうでないお話も凄く引き込まれるので、是非機会があれば手に取っていただければと思います。

どの作品も素敵です。

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